第2話 遠き島

 ハンソン島はカナダのバンクーバーからバスで10時間+民間タクシー30分

+クルーザーで30分とひじょうに行きにくい場所にある。個人旅行ではとても

行けない。というのも、クルーザーをチャーターしないことには島に渡れない

のだ。クルーザーのチャーター代は片道約600ドルとかなりの高額。しかも

クルーザーを仮にチャーターしたとしても、島で泊まるところも食料もない。

完全にキャンプの準備と食料を確保し、しかもクルーザーを自分でチャーター

しなければならないのだ。

 クルーザーはハンソン島の岸辺に向けて徐々にスピードを落としていく。

モーター音が船体を通して体に伝わってくる。島の湾内にはもちろん港も

なく、岸近くは水位がないためクルーザーを寄せるのもひと苦労。一歩間

違うと、海底の石などに船のスクリューをぶつけて、傷つけてしまう可能

性もある。潮の満ち引きも関係してくるので、クルーザーを接岸していら

れる時間はそれほど長くはない。島への上陸の喜びも束の間、僕たちはク

ルーザーから荷物を手渡しで すぐさま運び出した。総勢9名分の食料だけ

あって、かなりの量。荷物を島に降ろすと、クルーザーは颯爽と去ってい

った。次にクルーザーの船長と会えるの は、2週間後になる。

 みな長旅で疲れてはいるが、クルーザーから運び出した荷物を分担して持つ。

そこからキャンプまではさらに20分の山道。疲れているので、顔を上 げてゆっくり

景色を堪能するだけの余裕もなく、背の高い針葉樹の森閑とした中をただひたすらに

歩いた。どんどんキャンプが近づくにつれ上り坂になり、2人 がなんとか通れるほど

の小道となっていく。リュックを背負った上に、片手に食料を持っているので、肉体的

にはかなりきつい。やっとの思いでキャンプの入り 口に辿り着いた。そこには

『Earth Embassy』という木看板が立ててあった。

ついに着いたのだ! 

 キャンプに入っていくと、大きなビニールテントが左手に見え、さらに進むと右手に

木造の屋根付き団欒スペースがあり、その奥にメインの小屋が見えた。
 キャンプのボスであり、僕たちをここまで導いてくれたマナの父親でもあるウォレス

が迎えてくれた。
「ウォッホッホッホ」と笑いながら、サンタクロースのような白ヒゲのウォレスの顔を

見ただけで、僕の疲れはどこかに吹き飛んだ。みんなも同様だった。
「Welcom to Yuksum Island(ハンソン島の別名)」
 ウォレスはやさしく微笑んだ。

 僕らは一人ずつ握手を交わした。ついにあの写真の男性と出会えたのだ。僕は一人

気持ちが高揚していた。いや、僕だけではなかったはずだ。挨拶も 済んだところで、

男子にはまだ仕事が残されていた。持ちきれなかったクルーザーから運び出した荷物

が、まだ岸にあるのだ。またスタート地点まで戻らなくて はならない。僕とカナダの

青年アイザック、お仙さんの3人で取りに戻った。往復40分の道のり。陽が落ちて

きつつある。僕らは急いで悲鳴をあげている体に むちうって、来た道を戻った。